グーテンベルク42行聖書
〜「ベルブリン本」ファクシミリ版について〜
羅針盤・火薬とともに、世界三大発明のひとつに上げられる活版印刷術の生みの親、ヨハン・グーテンベルクは、1400年前後にマインツで生まれ、1468年にその生涯を閉じた。彼はこの技術を用いて世界初の印刷聖書であるグーテンベルクの聖書を生み出した。中でも最高傑作といわれているのが、1452年から1455年頃に製作されたラテン語訳のウルガタ聖書である。通称「42行聖書」と呼ばれるこの聖書は、本文がほとんどのページにおいて各42行の二段組で構成されていることからそう呼ばれている。
「42行聖書」は約180部が印行され、そのうち150部が紙本、残り30部が羊皮紙本と推定されている。うち現存本は48部(紙本36部と羊皮紙本12部)で、完本はわずか21部しか残っていない。
グーテンベルクは外見をできるだけ写本に近づけるために連字などを含む約290種類の活字を製作したといわれる。当初、朱書き部分も印刷が試みられ、現存本の一部は二色刷りページを含んでいるが、途中から手書きに変更された。頭文字などの装飾部分も同様に印刷後に手で加えられ、これらの手書き部分は別々の工房で行われたため、現存本ごとに大きく異なっている。
「稀書中の稀書」である「42行聖書」のなかでもポーランドのペルプリン神学校図書館に所蔵される2巻本の42行聖書は、「ペルプリン本」と呼ばれ、第二次世界大戦前夜から戦後にかけて共産主義政府などによる略奪の危険から逃れるために、ポーランド、イギリス、パリ、カナダ、そしてまたポーランドへと4カ国をさまよった物語をもつことで知られている。
「ペルプリン本」は全本で640葉からなり、2段組の各段の大きさは約285×85ミリ、大半が42行である。第2巻は316葉で、黙示録末尾(第20章9行目まで)を含む第317葉と白紙2葉(第318~319葉)の計3葉が欠落している。
創業の長い会社は、創業者の想いのこもった記念物をエントランスに展示しています。
2007年に現在の新社屋に移転する際、弊社もエントランスに何か展示しようと、会社のイメージを象徴する何かはないか、と思っていたところにグーテンベルク聖書を思いつきました。
グーテンベルク聖書は、先に述べたような物語を秘めています。弊社エントランスを飾るポーランドの教会で発行されたシリアル番号のついたレプリカで、現存本は21冊しかありません。
活版印刷の祖であるグーテンベルクがこの42行聖書を作った理由は諸説ありますが、印刷・製本のルーツがここにあると考えています。
一説ではグーテンベルクは大量に聖書を作り、それを人々に売ろうとしました。人々が欲しているコンテンツを大量に作る方法を考え、商売をしようと思って始めた。これが印刷のルーツであり、人の役に立つための生産のはじまりでした。
今は印刷業と言えば、印刷をすることが仕事になっています。
しかし本来、印刷は手段であって目的ではない。グーテンベルクの活版印刷術を用いた聖書の大量製作がまさにそうです。ここに真理を感じました。
ルネサンス期世界三大発明の一つである活版印刷。そして「世のため、人のため」が利益となる「ものづくり」の原点であるこの聖書。
「より良い情報を多くの人々に伝達するために生まれた手段」である「印刷」という偉大な仕事に携っているという誇りを持ち続けたい…そういう想いから、エントランスに飾っています。
代表取締役 黒田季之